煮物屋さんの暖かくて優しい食卓 番外編2 表現する声と経験と
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ご覧いただきありがとうございます。 Web掲載 「煮物屋さんの暖かくて優しい食卓」 の番外編2 「表現する声と経験と」 です。 煮物屋さんというお店で、店長の佳鳴と弟の千隼、そしてお客さまたちと繰り広げられる、暖かくて優しい物語です。 今回は教師をされている女性のお話。相談があると生徒が訪ねてくるのだが。 ・文庫サイズ/38ページ 本編の小説はこちら。 https://ncode.syosetu.com/n2156fz/(なろう) https://kakuyomu.jp/works/1177354054893762233(カクヨム) https://www.alphapolis.co.jp/novel/773393922/989392696(アルファポリス)
▼おためし読み
(中略) 「あ、あの、深川菜美と言います。ご迷惑をお掛けしてしまってごめんなさい」 深川さんは慌てて頭を下げた。佳鳴は「いえいえ」と手を振った。 「ごゆっくりなさってくださいね。私が一応店長です。こちらは弟です」 「はい。ごゆっくりどうぞ。姉ちゃん、俺ちょっと上見て来る」 「は〜い」 千隼が急いで上の居住スペースに上がって行く。 「店長さん、ウーロン茶ください」 砂月さんは言って、まだ半分ほど入っている冷酒のグラスを脇に寄せる。それを見て深川さんは首を傾げた。 「先生もうお酒飲まないんですか?」 そのせりふに砂月さんは「あはは」と笑みを零す。 「生徒のお話をお酒飲みながら聞くなんてしないわよ」 「え、飲んでください」 「大丈夫。あとでまた飲むから。あ、ありがとうございます」 タンブラーに入れたウーロン茶を佳鳴から受け取った砂月さんは、それを半分ほどぐいと飲み干した。 その時千隼が上から戻って来る。手には木製の器。その中には小包装されたバームクーヘンやワッフルが入っていた。それを深川さんの前に置く。 「こんなものしか無いんですけど、よろしければどうぞ」 「え、い、良いんですか?」 深川さんが嬉しそうに顔を輝かす。自分たちが時々摘まむおやつを適当に見繕って来たものだ。スーパーやコンビニなどで買える手軽なものばかりなのが申し訳無いが。女の子だから甘いものが好きだと決め付けるものでは無いが、今は洋菓子しか無かったのである。 「周りが皆食べているのに何も無いって言うのもね。でも家で親御さんが作られた晩ご飯を食べられるでしょうから少しだけ」 千隼がにっこり笑って言うと、深川さんも「えへへ」と笑みを浮かべた。 「いただきます」 深川さんはワッフルの包装を剥ぐと大口でかぶり付いた。どうやら緊張も大分解けて来ている様だ。お腹も空いていたらしい。それもそうだ、もう夜だ。昼から何も食べていなかったのなら、食べ盛りだから保たないだろう。様子を見てお菓子を追加してあげよう。 ワッフルひとつをぺろりと食べて少しお腹も落ち着いたのか、カルピスソーダを飲んで「ふぅ」と息を吐いた。そして少し逡巡する様に目を伏せ、ぽつりと「あの、砂月先生」と呟く様に言った。 「ん?」 砂月さんの返事は何気無い。あまり深刻な雰囲気にならない様にしているのだろう。深川さんの話、相談事は様子を見るに真剣なものなのだろうが、話し辛くならない様に。 「私、今年受験生なんですけど」 「そうね。三年生だもんね」 「私、声優になりたいんです。演劇部に入ったのも少しでも演技の勉強ができたらと思って」 「あら、素敵な夢じゃ無い。じゃあ演劇は高校に行っても続けるの?」 「いえ。私高校には行かず、声優の養成所に入りたいんです」 深川さんはきっぱりとそう言い放つ。それには砂月さんも驚いて目を見開いた。 「高校に行かないつもりなの?」 続きはぜひ本でご覧くださいませ。よろしくお願いします!( ̄∇ ̄*)