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ご覧いただきありがとうございます。 Web掲載 「煮物屋さんの暖かくて優しい食卓」 の番外編3 「ご奉仕の埋め合わせ」 です。 煮物屋さんというお店で、店長の佳鳴と弟の千隼、そしてお客さまたちと繰り広げられる、暖かくて優しい物語です。 今回の常連さんはメイドカフェにお勤めのメイドさん。お仕事内容にほんの少し不満があって…? ・文庫サイズ/38ページ 本編の小説はこちら。 https://ncode.syosetu.com/n2156fz/(なろう) https://www.alphapolis.co.jp/novel/773393922/989392696(アルファポリス) https://kakuyomu.jp/works/1177354054893762233(カクヨム)
▼おためし読み
(中略) 「まぁまぁ小池さん、裏にご用意してますよ」 佳鳴が言ってにっこりと笑みを浮かべると、小池さんはぱっと表情を輝かす。 「良いですかぁ?」 「もちろんです。皆さまもお待ちかねですよ」 すると小池さんから席をひとつ開けて座っているご年配の山見さんご夫妻が、にこにこと「ふふ、私たちも楽しみにしているんですよ」と言った。 「嬉しいねぇ。なんだかわしらも若返る気がするんじゃよなぁ」 「わぁ! そんなこと言ってもらえたら、私調子に乗っちゃいますよぅ」 山見さんご夫妻は「うふふ」「ははは」と穏やかに笑う。山見さんご夫妻から見たら小池さんは孫の様な年齢だ。大抵のことは微笑ましく映るのだろう。 「じゃあ行って来ます!」 小池さんは少し残っていた料理をぱくぱくと平らげ、グレープフルーツサワーもぐいと飲み干すと、いそいそと席を立って店の奥、脇の小部屋へと急いだ。 そして数分後。小部屋から出て来た小池さんは左手を腰に当て、右手を天に突いて高らかに声を上げた。 「きゅーん!」 するとお客さま方は待ってましたとばかりに「きゅーん!」と応え、大いに盛り上がる。いつもは騒がしくも穏やかな煮物屋さんの空気が一変した。 再登場した小池さんはひらりとしたミニ丈のメイド服に着替えていた。とても艶やかなワインレッド。ひらりとしたエプロンとヘッドドレスは白だ。スカートをふわりとさせているのは二重の白いペチコート。見せられる生地でできていて、太ももの辺りでスカートと三重になって揺れている。 首元を飾るカチューシャはワインレッド。靴下は膝上まであるリブニーハイソックスで、色はこちらもドレスとお揃いのワインレッドだ。足元を包んでいるのはエナメルのチャンキーヒール。来られる時に履いて来たものだ。 「あはは、たまのこれが結構楽しいのよねぇ」 門又さんが楽しそうに言って、空になったグラスを掲げる。 「さっそくお願いしようかな。小池ちゃん、麦焼酎の水割りお願ーい」 「はーい! かしこまりましたぁ」 小池さんは元気に言って門又さんからグラスを受け取る。それを「店長さぁん」と佳鳴に渡した。 「お願いしま〜す」 「はい。お待ちくださいね」 佳鳴は新しいグラスを出して麦焼酎の水割りを用意する。それを小池さんに「お待たせしました」とお渡しする。 「ありがとうございまぁす」 小池さんはそれを「はい、お待たせしましたぁ!」と門又さんに渡す。そして「美味しくなる魔法、お掛けして良いですかぁ?」と訊いた。 「うん。お願いね」 門又さんが笑って言うと、小池さんはにこーっと満面の笑みになった。 「ありがとうございますぅ。では掛けさせていただきますね!」 小池さんは笑顔のまま両手で空にハートの形を描き、そのハートをタンブラーに込める様に掌を伸ばした。 「美味しくなぁれ、美味しくなぁれ。きゅーん!」 「きゅーん!」 門又さんはそれに応え、ふたりは楽しげに「ふふ」と笑い合う。 「は〜い、どうぞ!」 「ありがとう。いただきます」 門又さんはこくりとタンブラーに口を付けて「うん」と頷く。 「いつもより美味しい気がするわ」 「えへへ、ありがとうございますぅ」 小池さんは少し照れた様に笑った。 「美味しいご飯と美味しいお酒と可愛いご奉仕。良いよねぇー」 門又さんが満足げに言い、榊さんも「ね〜楽しーい」とほっこり同意した。 「小池さん、こっちもお願い。ビールで」 「はぁい、お待ちくださぁい!」 佳鳴から瓶ビールを受け取った小池さんはお客さまの元へ。グラスに瓶ビールをお注ぎして、美味しくなる魔法を掛けた。 「きゅーん!」 「きゅーん」 お客さまもノリ良く応えてくれ、小池さんはまた嬉しそうににっこりと笑った。 小池さんのお仕事はメイドカフェのメイドさんなのである。小池さんが勤めるメイドカフェはお客さまを「ご主人さま」「お嬢さま」と呼び、お迎えの時には「お帰りなさいませ」、退店される時には「行ってらっしゃいませ」と言う。そこは一般的なイメージのメイドカフェなのだが。 カフェそのものはクラシカルな佇まいで、メイド服もモノトーンのロング丈。美味しくなる魔法も掛けない。ご主人さま、お嬢さまとのお喋りもほとんど無し、写真撮影も無いのである。 メイドカフェで言うところのいわゆる「ご奉仕」が無いのだ。 続きはぜひ本でご覧くださいませ。よろしくお願いします!( ̄∇ ̄*)